2001年当時、韓国バラ育種家の懸念は、高額なロイヤリティをヨーロッパの育種家に支払わねばならないことでした。
しかし、2002年UPOVに加盟。
国内で開発された新品種の海外への流通を促進させ、現在世界各国にバラを送り出す輸出国へと変貌を遂げたのです。
世界市場と韓国品種のバラ
韓国品種のバラは、世界のバラ市場での占有率は、過去1%以下であったのが、2014年現在約20%を占めており、
今後さらにシェアを拡大する見込みです。
いくつかの韓国のバラの品種を紹介しましょう。
「フィール・リップ」という深紫のバラがあります。
韓国国内での人気はなかったのですが、病虫害に強い品種でした。
2013年に輸出を開始したところ、特に南米やアフリカで形や色、大きさが支持され人気の品種となりました。
「ピーチ・バレー」「ピンク・ハート」も同様です。
国内では余り好まれない色でしたが海外では人気を博したのです。
バラを輸出する主な地域は南米とアフリカです。
従って韓国品種のバラがロイヤリティを受け取れるビジネスもこれらの地域で行われています。
中でもケニアやエチオピアの農場での生産が増加しています。
南米、アフリカでの当社の状況についてご説明します。
南米
エクアドルでは、海抜2,500~3,500メートル、日中の平均気温24℃、夜間10℃という寒暖の差が激しい土地ですが、強い日照や大きな寒暖差への耐性がある品種ゆえ、順調に生産が進んでいます。
現在エクアドルでの輸出品目のトップ5にバラがその名を連ねています。
一方コロンビアでも海抜2,000メートル、日中の平均気温22℃、夜間6℃という環境のもとで韓国育種品種のバラの栽培が進められています。
輸出先は、主に米国とロシアです。
特にロシアへは、少量ながら高品質のバラを輸出しています。
アフリカ
ケニアは海抜0~1,500メートル、日中の平均気温26℃、夜間10℃、乾期には水不足が懸念され、毒虫も多い中での栽培ですが、強い日照や大きな寒暖差、病虫害に強い品種の栽培が行われ、ほとんどがヨーロッパに輸出されています。
一方エチオピアでは、海抜2,000~3,000メートル、平均気温は1日を通して16~22℃、栽培に最適な気候です。
輸出先は、ヨーロッパです。
設備投資コストの抑制
バラ栽培をグローバル展開するにあたり、設備投資コストも考慮する必要があります。
南米やアフリカでは、ガラスではなくプラスティックのハウスでバラ栽培を行っており、その設置コストはガラスハウスに比べ僅か10%に抑えられています。
GARES社の販売実績
韓国のバラ育種会社、GARESは2014年までに合計2,892,188本を販売しており、現在9種の商業品種を育種しています。
世界19ヶ国186農場でGARES社の品種が栽培されています。
ロイヤリティの受領者に
韓国は2014年諸外国に対し約100万本分のロイヤリティを支払った一方で、上記の通り289万本分を外国へ販売しました。ロイヤリティの支払者から受領者へ変貌を遂げたのです。
(2015年9月3日:韓国wonwoo tradingチャーリー・ジオン氏 第8回東アジア植物品種保護フォーラム シンポジウム講演より)
岩手県の北西部に位置する八幡平市(旧安代町)では1970年代にリンドウの栽培が始まりました。
その後需要の拡大を目的にりんどうの輸出を目指し、UPOV条約に基づき新品種を開発・登録。
世界に販売網を広げることで生産者の利益に結びつけることに成功しました。
現在約170名の生産者たちがオリジナル品種「安代りんどう」の生産に取り組み、オランダ、ニュージーランド、チリなど世界中へ販売しています。
オリジナル品種の開発
旧安代町でりんどう栽培が始まったのは、冬場の出稼ぎ生活をせず地元で収入を得るための策でした。
その後の国内での競争激化による価格下落から、生産者たちは、生き残りを目指し、りんどうの品種改良によるブランド化に取り組みます。
国内需要の拡大においては、7月~10月までの出荷に対応できる品種を新たに開発しました。
ニュージーランド、チリでの安代りんどう栽培と、欧米への切り花輸出
さらに海外需要の開拓にも乗り出します。
南半球で栽培し冬場に日本に輸入すれば、1年中リンドウの需要が維持できると考え、1995年ニュージーランドへ「安代りんどう」の苗と栽培指導の輸出ビジネスを開始。
その後チリでも同様のビジネスを展開。
海外への苗販売・栽培指導・輸出・ロイヤリティ回収というビジネスモデルを作り上げました。
更に切り花をニュージーランドからヨーロッパに、チリから米国に輸出するスキームが出来つつあります。
チリでの栽培の様子
オランダへの切り花輸出とブランド戦略
2002年、オランダへの切り花輸出を開始します。
当初は低価格なオランダ国内産のりんどうに苦戦しますが、その後ブランド化戦略に取り組みます。
切り花の入ったバケットに安代りんどうの場所が入った地図とロゴマークのステッカーを貼り、品質が良く一定である
ことを訴求していきます。
2005年にヨーロッパでの品種登録、2008年に同じくヨーロッパで安代りんどうを商標登録。
2011年からは、シンガポール、米国、香港への輸出を開始します。
2014年日本からEUへの輸出量は67,000本。販売額は対前年比37%増でした。
オランダでセリに出される安代りんどう
世界市場を視野に入れ、商品を販売しそこで得た資金を、新たな品種開発や人材育成に利用し競争優位性を維持することを常に目指しています。